東南アジア中華暗黒ベルト特殊詐欺拠点のしくみ
さて、というわけで表記の件についてAIとの音声対談をお送りします。
とはいえ、「超仕事できるおっさん記者」とプロンプトでキャラ設定をしたのに、チャッピーに超仕事できる感がないのが難点。とはいえ、話自体がディープすぎるのでなんとかなるでしょう。それではお送りします。
朝日で揉まれてきた田辺(おっさん)です
──こんにちは。朝日で20年ちょい、社会部と外報で揉まれてきた田辺です。昔は警視庁担当で、夜中の張り込みもやってた口です。最近は若い記者の愚痴を聞きながら、原稿を直す毎日ですわ。
今回のテーマは「東南アジア中華暗黒ベルトの特殊詐欺拠点の仕組み」です。まず、あなた自身はどこまで実際に見聞きしているんですか。
安田 警視庁担当は大変ですね。おっさん、AIなのに……。さておき質問に答えますと、カンボジアやミャンマーには、中国系、中華系の大規模な特殊詐欺拠点があります。「園区」と呼ばれる、非常に広いパークですね。内部に完全に入ったことはないんですが、現地で周辺取材を何度もしています。
ミャンマーだと、いわゆる「KK園区」の近くに2025年2月から3月にかけて行きました。愛知県の日本人高校生が騙されて働かされていたことで、当時話題になっていた場所です。本当は内部に入れる予定だったんですが、いろいろあって入れなかった。なので外から見ています。
カンボジアでは、タイ国境のポイペト周辺を中心に、6〜7カ所くらいの拠点を外から見ています。一番有名なのが金河園区で、私が2025年5月に現地取材していたとき、ちょうど日本人29人が逮捕されました。彼らは日本に移送されたので、裁判や関連の捜査は今なお続いていると思います。

金河園区。2025年5月筆者撮影。
──現地の空気は、どんな感じでした?
安田 場所と時期によります。2024年3月初頭のKK園区周辺は、非常に緊張していました。KK園区はミャンマーのミャワディ周辺にあって、対岸がタイのメーソットです。
メーソットの町に入るときにタイ軍の検問があって、そこで5〜6時間。軍人からいろいろ質問を受けて、いわゆる拘束です。最後は偉い人のところに連れていかれて、ご挨拶して。結果、「町にいるのはいい」と。
ただし、パスポートはタイ軍が預かる。帰りは陸路ではなく空路でバンコクへ戻ってもらい、飛行機に乗るとき空港で返す。それから絶対にKK園区の側へ行くな、ミャンマー側へ渡航するなと強く言い渡されました。
それで渡航は諦めて、タイ側の対岸から観察しました。バイクを借りて周辺を回り、川の向こうの園区を望遠レンズで撮っていたんです。ただ、タイ側の住民もかなりセンシティブでした。「何を撮っているんだ」と言われるとか、通報されかけるとか(笑)。

タイ軍に拘束中。2025年2月末、安田撮影
一方、カンボジアでは、大量に逮捕者が出ていても、現地は特に緊張した雰囲気はない。ポイペトやシアヌークビルは、中国人が本当にあちこちにいる。しかも彼らは、詐欺拠点で働くことを何もタブー視していません。
中国人向けのマッサージ店に行ったら、普通に「お前、どこの会社で働いているんだ」と聞かれました。ここでいう「会社」、中国語の「公司」は、詐欺拠点のことです。
こちらも彼に話を合わせて、「詐欺拠点で中国語の通訳をやっている」みたいなことを言いながら話を聞いていました。少なくとも現地の中国人経済では、詐欺で回ってます、みたいな感じがすごかったですね。
詐欺のアウトレットモール
──「これはやばい」と肌で感じたのは?
安田 カンボジアのある園区で、こういう「会社」のリーダーをしていた人物に、帰国後に接触できました。
詐欺の売り上げが上がらないと、「てめえの足を切り落とす」と言われて、中華ヤクザが斧を持って脅す。目の前で、中国人かベトナム人、おそらく中国人が見せしめに銃で撃たれて死ぬ。そんな話を山ほど聞きました。やばいというのは、言うまでもないですよね。
──「園区」という単語が出てきましたが、これは「(詐欺拠点の)会社」とは違うんですか? システムを教えてください。日本のテレビ報道で、「東南アジアの特殊詐欺拠点」みたいな表現もありますが、「大規模」とは……?
安田 そうですね。詐欺は極論、おっさん一人で電話をかけてもできる。それだって特殊詐欺拠点ですよね。
では、東南アジアにある「大規模」な特殊詐欺拠点とは何なのか。一番分かりやすいイメージは、アウトレットモールです。
──は?
安田 木更津や御殿場にあるようなアウトレットモールを想像してください。あの広い敷地全体が、詐欺パーク、つまり園区というイメージ。
似ているのは規模感だけではなく、運営形態も似ています。
アウトレットモールって、GAPとかナイキとかポールスミスとか、いろんなテナントが入っていますよね。それぞれのテナントは、他のテナントの業務には関与しない。自分の店を運営しているだけです。
園区も同じで、内部に一つ一つ、「会社」(公司)と呼ばれる詐欺拠点がテナントのように入っています。「会社」ひとつあたり10〜20人くらいのところが多いそうですね。
そして、一つ一つの運営者は違う。隣の会社が何をしているか、あまり把握していないこともあります。アウトレットモールで、GAPのお店が隣のナイキの業務の詳細を知らないのと同じ。
──なるほど。
安田 さらに、アウトレットモールは店ごとにコンセプトが違います。この店はメンズのスーツ、この店はスポーツウェア、この店は30代女性向けの服を売る、という具合に。
園区のなかの「会社」も同じです。
「うちは中国向けのオンラインカジノ詐欺をやる」「うちは日本の高齢者向けにロマンス詐欺をやる」というように、会社ごとに業務が分かれています。
手口も違います。たとえば詐欺電話をかけるにしても、名簿を見ながらかけるのか、ランダムにかけるのか。一人で最後まで被害者を追い込むのか、数人でチームを組むのか。全部違う。

台湾での取材で入手した、ミャンマー・カチン州の園区内から流出した台湾人女性向けロマンス詐欺マニュアルの一部。執筆者は中国人とみられる。2026年1月、安田撮影
園区のなかには、場合によっては何千人単位の人間がいて、それぞれ別の会社に属しています。
会社の大部分は金主が中国系か台湾系で、ターゲットも大部分は中国人です。ここでいう中国人向けには、アメリカなどに住む華僑も含まれますが。中国語を使って詐欺をするわけです。
そのなかに「日本盤」と呼ばれる、日本をターゲットにしたグループもある。日本語が必要なので、日本人が雇用されます。私が話を聞いた人物も、その日本向けグループにいました。
英語圏向けでは、アフリカや南アジア出身者がよく雇用されます。彼らは英語ができますから。韓国向けのグループもあります。
園区のなかはひとつの街です。コンビニも食堂もあるし、「会社」で働く詐欺師のための性風俗店もある。カンボジアのポイペトの金河園区は台湾の高雄系の角頭(地方ヤクザ)の系統なので、敷地内に道教の廟もありました。
あと、金河園区はオーナーの趣味なのか、敷地内でいろいろ猛獣や希少動物を飼うがエリアがあったらしく、日本人詐欺師の間では「動物園」と呼ばれていたそうです。

金河園区の内部。右側に台湾人が建てた道教の廟が見える。なお、左手前の建物は「拷問部屋」。2025年5月、安田撮影
運営の形態
──園区の運営形態はどうなっているんでしょう。
安田 こちらもアウトレットモールの例がわかりやすいです。たとえば木更津モールは三井グループ、御殿場モールは三菱グループが運営母体ですよね。それと同じで、詐欺園区全体にも、母体となる会社があります。
一番有名なのが、プリンスグループです。カンボジアでも上位に入る巨大財閥で、中国・福建省出身の陳志(現在は中国に送還)という人物が作った、本業として不動産をやっていたグループでしたが、非常に大きい。日本にも複数の拠点がありました。
彼らは自分たちが詐欺を直接やるわけではなく、園区全体のアガリを受け取る立場にある。
あと、アウトレットモールの例に話を戻しますが、あれって土地の提供などで地方自治体と組んでいますよね。もちろん、あちらは健全な商売としてですが。
特殊詐欺の園区も同じで、地元の権力者と組んでいます。
カンボジアの場合は、地元有力者、政商、政治家です。その関係を根元までたどっていくと、フン・セン周辺のファミリーにまで接続していく。そういう構造がおおむね明らかになっています。近年は国際的な批判が強まったので、カンボジア政府はいちおう摘発側に回っていますけどね。
ミャンマーの場合、同様の役割を担うのが地元の軍閥です。あの国はずっと内戦をしているので。
──実際に現地で園区を見て、印象は変わりましたか。
安田 ある意味では変わりましたが、この話自体は、中華圏のニュースを追っていると、2021年頃から分かっていたんですよね。日本で盛んに報じられるようになったのは、2024年1月以降、日本人高校生が働いていたことが発覚してからですが。
なので、現地で建物を見ても、「やはりこんな感じか」というところはありました。
むしろ印象的だったのは、そこで働いている人間を実際に見たことです。
日本のニュースでは、日本の若者がだまされて連れていかれた、という話になりがちです。でも、東南アジアの園区の従業員から見ると、日本人の割合は少ない。ひとつの園区あたり、多くても50人〜100人くらいでしょう。残りの数千人は中国人がほとんどです。インド人などもいますが、大部分は中国人です。私やSNSでこの事情に詳しい人は、こうした中国人の詐欺従事者を「暗黒ニキ」(暗黒兄貴)と呼んでいます。
私がタイのメーソットでタイ軍に尋問されていたとき、ミャンマー側の園区から、「解放された」という名目の暗黒ニキたちが、バスに乗ってタイ側へ戻ってきました。で、すぐ近くで彼らも尋問を受けていたんです。だから非常に近くで見ることができたし、話し方も分かった。
「ああ、やっぱりこういうやつらがやっていたんだな」と思いました。

メーソットの検問所前でバスに乗り込む暗黒ニキたち。2026年1月安田撮影
暗黒ニキの実態
──どんな人たちでした?
安田 分かりやすく言えば、中国の「意識が低い人」です。30代くらいで、デブで角刈りで、短パンにTシャツ。Tシャツもだるだる。話し方も泥臭い。中国の田舎や、城中村と呼ばれる都市のスラムに行くと、よく見かけるタイプです。
──彼らには、どんなことを言っていました?
安田 彼らは捕まった後、みんな「自分はだまされて連れてこられた」と言うんです。そう言わないと、「お前は詐欺の犯人だろう」となって、罪が重くなるから。
ただ、現地の関係者や事情を知る人たちから話を聞いて総合すると、少なくとも2024年のミャンマーの園区では、働いていた人間の9割程度は自分から来ていたと聞いています。だって、成功すれば儲かりますから。
もちろん、日本人の場合は「日本語ができる人」の需要が強いことで、騙されて連れてこられた人の割合は上がります。ただ、「自発的就職組」もかなりいると感じますよ。詐欺マネージャーの人物も「騙されてきたやつはモチベ低いので使えない」と言っていましたし。
──「自発的就職組」の人たちの動機はお金だけですか。
安田 お金だけです。
あと、儲けられる暗黒ニキは、そもそも儲かっているんだから「会社」を離れる理由がない。
園区が華やかだった頃は、詐欺で日本円にして1000万〜2000万円を一気に騙し取った人間がいると、打ち上げ花火を上げて祝っていました。ヒーロー扱いで自己肯定感も得られるし、金も儲かる。離れる理由がないですよね。
一方、全員が仕事のできる人間ではありません。できない人は離れたがる。でも離れられない。
売り上げが上がらなければ、普通に拷問されます。鉄アレイで殴られる。スタンガンを当てられる。鞭で殴られる。退職する自由はありません。
そういう人は別の園区へ売り飛ばされることも多々あります。どこも人手不足ですから。でも当然、買い取られた後も仕事はできない。すると買った側は、「高い金を出して買ったのに使えない」と腹を立てて、さらに暴行する。地獄ですよね。
中国共産党は”必要”だった
──こういう取材をすると、後まで引きずりますか。
安田 他にもやばい取材はいくらでもあるので、あまり引きずらない方です。とはいえ、詐欺園区については結構影響を受けるというか、いろいろ考えますよね。日本へ帰るとホッとしますから。
──取材前と後で、世界の見え方は変わりましたか。
安田 中国に対する見方そのものは変わっていません。ただ、その見方が強化されたところはあります。
特にカンボジアやラオスが顕著ですが、ある社会に一定数以上の暗黒ニキやガラの悪い中国人が増えると、彼らが町や社会を占領してしまう。中国国内の監視社会化とキャッシュレス決済による金銭の流れの見える化、さらに多額の借金を背負うと這い上がれない環境、といった各種の要因で、国内にいられなくなった「悪い人」が東南アジアに流出しているわけですから。
彼らは好き勝手に振る舞い、法律を何とも思わず、いろいろなことをやる。カンボジアでは、普通にそういう人がマフィアに殺されて、死体が大通りに捨てられる。田んぼを掘ったら暗黒ニキの死体が出てくるし、川にも死体が浮かぶ。「海ゆかば」の歌詞みたいになっています。
逆説的な言い方ですが、中国共産党が統制しない中国人の世界はこうなるんだな、と。かつてジャッキー・チェン(政治的には中国体制派)が「中国人は管理されるべきだ」と発言して中国のネットで炎上したことがあるんですが、「ジャッキー、実は当たっているのでは?」と。率直に言って、そう実感した面はありましたね。

2025年、テレグラムのカンボジア中国人チャンネルで見つけた投稿。あえて翻訳しない
──今後、園区はどうなっていくんでしょうか。
安田 一昨年ごろから国際的な圧力が強まり、昨年秋にはカンボジアのプリンス・グループの代表が逮捕。幹部の一人のフー・シーも、今年に入り日本で逮捕されています。それでも特殊詐欺拠点はカンボジアに多数ありますが、1拠点あたりの規模は縮小していて、往年のような園区は減っていると聞きます。
ただ、特殊詐欺はどこでもできる。実際、アフリカのシエラレオネで日本人のグループが逮捕されていますし、スリランカの特殊詐欺拠点で暗黒ニキと地元警察がバトルする動画を見たこともある。
内戦中のミャンマーはもちろん、東ティモールやアフリカ諸国など、国家のガバナンスが弱くて中国系資本が進出しやすい国はいくらでもあります。容易にはなくならないでしょう。園区の関係者は取材で「麻薬を売るよりも特殊詐欺の方がずっと儲かる」と話していましたし……。
以上です。編集していて思いましたが、AIおっさん記者(元警視庁担当)の質問でも、普通に記事として成立しているような……?
とりあえず、次回もこの方式で記事を作ってみましょう。
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