【中国の上級国民】ゴージャス爆美女お嬢様(在シドニー)をめぐる深い闇

リアルアイスちゃん事件だ!
安田峰俊(Minetoshi Yasuda) 2026.08.13
誰でも

今回、オーストラリアで調べきれなかったことがひとつあります。それは昨年7月にシドニー郊外で発生した、謎の中華美女・楊蘭蘭(Yang Lanlan)の交通事故。日本のメディアではほとんど報じられていないのですが、調べれば調べるほど興味深い話です。

一見してわかる育ちのよさ(下のキャプションはブラウザで日本語にしました)

一見してわかる育ちのよさ(下のキャプションはブラウザで日本語にしました)

Daily Mail Australiaより。楊蘭蘭が乗っていたのは左の高級SUV。

Daily Mail Australiaより。楊蘭蘭が乗っていたのは左の高級SUV。

まずは、関連報道のソースをたっぷり食わせたチャッピーによる概要をご覧ください。「ワイはアホや。アホでもわかるように言うてくれ」と注文のうえ、安田が多少の手直しをしております。

***

よっしゃ。アホでもわかる楊蘭蘭事件の説明やな?

早い話が、シドニー郊外で謎の金持ち中国人爆美女が高級車で事故って、「お前いったい何者やねん」と中国ネットが大騒ぎした事件や。

事故を起こした女の子、公開された出廷時などの写真を見る限り、長い黒髪で、服装も整っている。「謎の富豪令嬢」感が強かった。で、その背景をめぐっていろいろ噂が乱れ飛んだわけや。

中華美人がロールスロイスで事故る

→23歳? カネどこから出たんや

→親は誰や? 調べてもわからん

→余計怪しいやんけ

→中国ネット総探偵化

ということやね。「中国の権力者一族が海外に隠している富が、交通事故でうっかり地上に露出したんちゃうけ?」という疑惑が、中国人の琴線に触れてしまったわけやね。

そういうことです。以下、彼女の名前はランランと呼びましょう(パンダ外交っぽいぞ)。

で、この謎の令嬢・ランランについて、別のプライベートショットがこちら。Daily Mail Australiaが撮影したものです。実際の報道を見ると、逃げるランランを記者が走って追跡していたりして、セレブパパラッチに慣れた英語圏メディアのやばさを感じることができます。

右側の女性がランラン。

右側の女性がランラン。

でも、人々が騒ぐのも納得という感じはします。なぜなら彼女のタイプは、中国語でいう「白富美」。つまり、育ちがよくて色白の美しいお嬢さんの大事件、というわけです。公判のときは在豪中国人の野次馬が集まって、裁判所の前でセルフィーを撮ったりしていたようです。

ミステリアス・ヤン

事件そのものについて、もうすこし詳しく書いておきましょう。2025年7月、当時23歳のランランが、シドニーの高級住宅街で100万豪ドル(約1220万円)以上もするロールスロイスSUVを運転中、対向車のベンツと正面衝突。相手の男性は脊椎や大腿骨などを骨折する重傷を負いました。

しかもランランは事故後、いったん車を降りて走って現場から離れ、約1分後に別の人物と戻ってきたと報じられています。さらに警察の呼気分析を拒否したとして起訴されたわけです。

まあ、この事故だけなら「金持ちのお嬢ちゃんがやらかした」で終わります。しかし、中国ネット民は騒いでしまったわけです。

23歳でなんでロールスロイスに乗れるんだ?? と。

蘭蘭は若くて美人、シドニーの富裕層エリアで豪奢な生活を送っている。ところが、職業が何なのか、親が誰なのか、巨額のカネをどうやって手に入れたのかが、報道ラッシュにもかかわらずさっぱり見えてこない。SNSなどネット上の痕跡も非常に薄い。

カネ持ってます!

カネ持ってます!

しかもランラン本人が何度も法廷に姿を見せず、弁護士も「家族背景について聞いたことがない」と答えたため、余計にあやしさがアップしました。

なお弁護士側は、法廷欠席などについて特別扱いではないと否定してはいます。しかし、「なぜこんなに秘密主義的なんだ??」という疑問は残るわけです。なお、ロールスロイスはもう1台持ってました。

リアル上級国民

ここで、中国人ならピンとくるのが「紅二代」の可能性です。

要するに、党の元老や高官のファミリーにつながる、中国版ガチ上級国民の子女。近年は日本にもやってきていますが、伝統的に彼らが多いのは米・英・加、そして豪州などの英語圏の主要諸国です(なぜかファイブアイズ好きなんですよねえ)。

事実、習近平の娘はアメリカのハーバード大学留学。かつて習のライバルだった薄熙来の息子はイギリス留学。厳密には紅二代ではない(=富二代)ですがファーウェイ創業者の令嬢の孟晩舟はカナダ永住権の取得歴あり。

もちろんオーストラリアについても、江沢民政権の重鎮だった曽慶紅の息子、新疆“解放”の立役者で中共元老である王震の孫娘、さらに習近平ファミリーも豪州コネクションあり……。と、錚々たるものです。

一般論として、中国の高官ファミリーは資産を海外に隠しがち。留学やその後の永住権取得で現地に地盤を築いた一族が、この手の財産管理をおこなっていたり、それにぶら下がってゴージャス生活をしていたりするのもありがちな話です。

Daily Mail Australiaが晒しまくるヤンヤンのプライベートショット。豪州のマスコミ怖い。

Daily Mail Australiaが晒しまくるヤンヤンのプライベートショット。豪州のマスコミ怖い。

今回の事故を起こした蘭蘭が紅二代か否かは、現時点まで”正確には”確認されていません。

ただ、私が今回豪州で話を聞いた中国系の情報通たちは、ある人は「彼女については触れるべきではない」と話題自体を避け、ある人は中国革命の元勲である楊成武秦基偉ラインの軍人ファミリーの娘であると即答し……。やっぱりめっちゃあやしい。

まあ、ネットの噂では「ランランは習近平の隠し子だ」みたいなめちゃくちゃな話すら囁かれている。さすがにそれはないだろ。実態はやはり不明ではあります。

ただ、紅二代子女は社会生活では別の名前を身分証付きで持っていることもあります(習近平や温家宝の娘がそうなのが確認されています)。ランランが仮に楊成武の一族なら日常的に本名を使うのかなあという疑問も浮かびますが、逆に言えば習近平・温家宝クラスの人の親戚でもなければ偽名は使わないのかも。習、温、という比較的めずらしい姓に対して、「楊」はありふれた姓ですしね。

楊成武―秦基偉ファミリーと蘭蘭。私が今回会った人の誰かがくれた画像。

楊成武―秦基偉ファミリーと蘭蘭。私が今回会った人の誰かがくれた画像。

とはいえ、ランランが相当な特権層の娘であることは、持ち物や事故後の振る舞いからしても確実です。かつて日本で「上級国民」扱いをされた人の愛車は10年落ちのプリウスでしたが、中国の本物の上級国民子女は23歳でロールスロイスを乗り回す。しかも事故ってもスペアにもう1台持ってる。桁が違います。

リアルお姫様がいる国

ところで、若い紅二代の子女は、実は美男美女率が高かったりします。

豊かなお育ち、バランスの取れた栄養と良好な教育。シュッとした人を作る要因の半分くらいは、育ちの良さも関係してくるわけです。加えて世代が下るほど、「よいおうち」なので配偶者のルックスレベルが上がる。

結果、その子はもはや骨格からしてスタイルがよくなりがち。ダービースタリオンみたいです。

左上から時計回りに、陳雲の孫娘&薄熙来の息子、習近平の娘、葉剣英の孫娘、賈慶林の外孫娘。

左上から時計回りに、陳雲の孫娘&薄熙来の息子、習近平の娘、葉剣英の孫娘、賈慶林の外孫娘。

なので、私はけっこう中国のレッド・ロイヤルファミリーのフェチです。現代の東アジアにおいて、王朝建国の功臣の子孫たちが作るクローズドでミステリアスな貴族社会が存在するのは、中国と北朝鮮だけ。でも、北朝鮮と比べると中国の方が服装や髪型がおしゃれ。日本人の一般的感覚でもわかりやすい美男美女がいます。

***

余談を重ねますが、8月19日刊行の拙著『エンド・オブ・スカーレット』で、ヒロインが中共八大元老の孫である紅二代ファミリー出身なのも、要するにそういう理由です。

創作物のヒロインは著者のフェチが反映される。手塚治虫や松本零士や宮崎駿の作品ヒロインがそれぞれあんな感じなのを見ればわかります。私は紅二代お嬢様のフェチなんだ(あと中国外交官フェチ)。だから、初小説のヒロインは紅二代でなくてはならない。

『エンスカ』ヒロインのアイス(左)。イラストは野上武志さんです。すてき!

『エンスカ』ヒロインのアイス(左)。イラストは野上武志さんです。すてき!

もちろん、小説の構想時にはなにも考えずにヒロインを紅二代にしたのですが、その後に豪州で楊蘭蘭事件が発生。容疑者の写真と暮らしぶりのニュースを見て「な!! 俺のキャラ設定めっちゃリアルでしょ??」と知人にLINEしまくったのが思い出されます。

ところでランラン、結局は何者なんでしょうね。

無料で「安田峰俊の"どこにでもある中国"」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら