取材のノウハウについての手記①

初期値も成長性も高くなかった取材スキルを伸ばす過程で考えたこと
安田峰俊(Minetoshi Yasuda) 2026.09.24
読者限定

半年ほど前から、取材しながらそのノウハウをスマホのメモ帳に入力しています。フリーランスの取材ライターとしてのノウハウを言語化しておこうかなと。結果、気づけば結構な文字数になりました。

事実、近頃は安田についてネットの評判や初見の編集者の反応を見ると「取材の人」「ルポの人」という評価が非常に多いようです。

実際は取材ではなく文献中心の『中国ぎらいのための中国史』『現代中国の秘密結社』とか、文章術の『みんなのユニバーサル文章術』とか書いてるし、なんなら小説の『エンド・オブ・スカーレット』も書いてますが……。と言いたくなりますが、さておき世間の評価はそうらしい。

中国外交官共産女子が活躍する『エンド・オブ・スカーレット』。まだまだ売り伸ばしたい。書籍で買ってね

中国外交官共産女子が活躍する『エンド・オブ・スカーレット』。まだまだ売り伸ばしたい。書籍で買ってね

しかし私、意外に思われそうですがもともとインタビューが苦手でした。学生時代の専門は文献中心の歴史学。その後の職務経歴でもマスコミで働いた経験はゼロで(そもそも正社員歴が人生で5ヶ月しかない)、記者教育も受けたことがない。

2010年に書籍を出してデビューしていますが、こちらの書籍は中国ネット事情で、取材はほぼゼロです。その後、流れでフリーのライターになって、たまたま週刊誌の仕事を受けるようになり、気づけば2014年くらいから多い時で中国に月1で出張。いつの間にか取材が上手になりました。

***

自分の能力を図にしてみましょう。デビュー直後の2010年4月(Lv.5)、まだ全然安定しない2012年4月(Lv.15)、現在の2026年4月(Lv.45 ※発病前)をレーダーグラフにするとこんな感じです。数値の3が「ひとまず通用する」、4が「プロとして安心して使える」くらいだと思ってください。

どっちにしても、おどる宝石とかメタルスライムっぽいピーキー系の能力配分。なお「儲かってるか」はスキルとは別の話である

どっちにしても、おどる宝石とかメタルスライムっぽいピーキー系の能力配分。なお「儲かってるか」はスキルとは別の話である

読みやすく文法や論旨に破綻のない文章が書ける、という意味の基礎的な文章力はもともと高い。また、商業作家に必要な「ぶっ飛んだことを考える能力」(企画力)も、初期値は低くても成長性は高く割り振られていそうだなと自分では思っていました。

ただ取材力については、本来の能力はほぼなく、成長性もないと考えていたスキルです。後天的環境に適応する過程で、サバイバルのために伸びたといえます。

もっとも、それゆえに言語化できる。せっかくなので、それらを紹介していきましょう。

相手に喋る快感を与える

人間は基本的に、自分の話を聞いてほしい。しかも、興味津々で聞いてもらって、自分の言葉を肯定して考えに共感してほしい。チャッピーがウケるのも要するにそういうことです。でも当然、AIよりも生身の人間にやってもらうほうが気持ちいい。

ちなみに私のチャッピーは「無駄な褒め言葉を絶対に言うな。忖度するな。機嫌取るな」と調教しまくっているので、ロボットそのままの冷血回答を連発してきます

ちなみに私のチャッピーは「無駄な褒め言葉を絶対に言うな。忖度するな。機嫌取るな」と調教しまくっているので、ロボットそのままの冷血回答を連発してきます

取材者からいえば、相手が気持ちよくなった結果、たくさん話してくれたら取材は成功。気持ちいいついでに、他の関係者を紹介してくれたらもっと成功です。

では、どう気持ちよく話してもらうか。具体的な方法以前に、重要なのは「関係性」です。下記に私(取材者)と取材対象のベストな関係性を記します。それは、

取材対象が私に一目置いているが「自分よりも5%目下」と感じている状態。

話していて一番気持ちいい相手は、こういう相手です。経験上、取材でいちばん重要なのは細かいテクニックではなく、対象との人間関係をこの図式に持っていけるかにかかっているとすら思っています。

しかし、このバランスは難しい。

なぜなら、相手に敬意や畏怖を覚えさせすぎると、緊張して固くなる。コンプレックスが強い相手の場合は反感を持たれることすらあり得る。これでは十分に話を聞けません。

かといって、こちらが完全なアホや小物だと思われるのもいけません。そんなやつ相手にドヤ顔で語るのは気分が悪いので、相手の口は滑らかではなくなります。そもそもアホを相手に、重要なことを喋る気にはならないでしょう。喋ること自体が時間の無駄だと思われるかもしれない。

では、どうするか。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、2068文字あります。

すでに登録された方はこちら