【保存版】スキャンダルの渦中の人がマスコミ取材を防衛する方法 総論編

敵を知れば防げる
安田峰俊(Minetoshi Yasuda) 2026.10.21
誰でも

私は中国ライターなので、中国のことだけを追いかけています。これは逆に言うと、ひとたび中国が絡めば天安門事件の真面目なルポも中国共産党美少女党員ボーイミーツガール小説も、なんでもするということです。

ゆえに、週刊誌でもよく仕事をしています。数は多くないですが、中国と関係さえあればスキャンダル報道に近いことをやるケースもある。たとえば、例のボート事故を起こした辺野古の反基地団体について、中国の『環球時報』の記者を船に乗せて基地を撮影させた事務局長の自宅にいきなりピンポン突撃、団体メンバーでもある局長夫人に延々と怒鳴られる……、みたいなやつです。

こういう突撃系のスクープ報道やその手法は、世間でしばしば非難されます。そりゃそうです。相手に対してはひどいことをやっている。「知る権利」とかを振りかざして自己正当化を図る気はしない(しかし、”需要”はあるので成立しているのですが)。

事実、濡れ仕事を手がけるときの自己認識は、ジャーナリストよりも人斬りや死神に近い感覚です。人斬りでも緋村剣心みたいな正義の志士じゃなく、司馬遼太郎の『人斬り以蔵』みたいなくらーい感じが近い。

しかし、今回の記事の主眼はそういう取材手法の是非を論じることではありません。一歩先の話をしたいのです。それは、

仮に自分が、なんらかのスキャンダルの当事者になったら?

迫り来る死神と死の舞踏

迫り来る死神と死の舞踏

血に飢えたドロマエオサウルスのように殺到するマスコミ。彼らがニヤケ顔で執行する、司法的手続きを経ない実質的な私的制裁。数の暴力に対してされるがままの生身の自分。崩壊する社会生活、去ってゆく家族と友人。

もちろん事の発端は自分の悪行なのですが、ここまでの目に遭っていいのだろうか? かなりゾッとする展開です。

そこで今回は、おそらく本邦初。あなたが死神に追いかけられたときの防衛法について、死神側の視点からお伝えします。

自分がどの程度のターゲットか見極める

世間で勘違いされやすい話ですが、死神たちは「誰にでも無差別に襲いかかる」わけではありません。また、実はその目的も「ターゲットを社会的に潰す」ことではありません。加えて言えば、彼らはあらゆる不倫や不正に自動的に制裁を下す社会正義の執行者でもありません。

彼らの目的は「仕事をする」ことです。つまり、企画を滞りなく記事(もしくは映像)に落とし込むという日常業務をこなすことです。死神も社会人であり、その業務の一環としてああいうことをやっています。

ならば、死神に狙われたあなたが、最初に注意するべきことは? それは、自分が相手の仕事(報道文脈)においてどのくらい重要なのかを見極めることです。

つまり、①取材を受けるのが自分じゃなくても報道が成り立つ企画なのか、それとも②自分そのものがメインの企画なのかを判断すること。

たとえば①について。仮に「東京五輪を失敗させた”A級戦犯”5人の正体」という企画で、自分が戦犯の1人と目されていたとします。こういうケースならまだ安心です。なぜなら、自分への取材が使われない可能性があるから。また、そもそも企画は編集部が仮に立てたものにすぎないので、自分が上手に逃げ切れば「A級戦犯4人」に変わるかもしれません。

こういうときは、たとえば自分だけ弁護士を立てて「狙うと面倒なターゲット」になってしまうとか、下記に紹介する手法のいくつかでノラリクラリと対応するとかで、被弾を免れられる可能性が出てきます。すくなくとも、あまり自分を悪く書かれないようにする、記事で悪目立ちしない形に落とし込んでいくことは難しくありません。

こういう状況になる前に逃げられることもある

こういう状況になる前に逃げられることもある

いっぽう、②の場合は厄介です。すなわち、自分がえげつない不倫や不正資金問題の当事者になっているとか、不祥事を起こした団体の責任者であるとかのケース。こちらはなかなか逃げづらくなります。

ただ、仮に②だった場合でも、どこまで太い企画で狙われているのかを見極めることは重要です。たとえば同じ不倫にしても、自分が人気アイドルや国会議員なのか、どこかの市長や1.5軍クラスのプロ野球選手くらいの「著名人か微妙なライン」の人なのか。後者の場合、取材の成果が薄かったり別の大事件が起きたりすると、企画自体がボツになってくれる可能性もあります。

また、キモすぎるLINEを不倫相手に送っていたみたいな「世間で食いつかれる要素」があるかないかでも、企画としての太さは全然違ってきます。

***

余談ながら、昨年に週刊ポストが報じた前橋市の女性市長の不倫問題は、はじめ他誌に持ち込まれてボツになったネタだったと噂で聞いています。結果的には各メディアが後追いする大きなスキャンダルになったものの、当初の段階では「市長レベルの不倫を報じてどうする」という編集部判断もあり得た。「細い企画」だったということです。

仮に「女性市長がラブホで既婚市職員と打ち合わせ」という世間が食いつくフックがなかった場合、おそらくどこの週刊誌も取り上げなかった可能性があります。

さておき、自分が不幸にして死神に狙われた際は、自身のポジションが①か②か、また企画の太さがどのくらいかを最初に見極めることが重要です。逃げられるか否かは、まず初期段階の判断にかかってきます。

まず総論編はここまで。次回は、死神から身を守るための実践編です。

無料で「安田峰俊の"どこにでもある中国"」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら