【保存版】スキャンダルの渦中の人がマスコミ取材を防衛する方法 実践編

山田作戦は有効か
安田峰俊(Minetoshi Yasuda) 2026.10.22
誰でも

前回に引き続き、あなたがスキャンダル当事者になってしまったときに、取材から自己防衛する方法について。前回は総論編でしたが、今回は具体的な実践編です。

逆ギレ対応は危険

不幸にして死神(=スキャンダル記者)があなたに突撃してきた場合、これは最重要です。

敵がライターであれテレビマンであれ、彼らが欲しているのはあなたの派手なリアクション。怒鳴ったり恫喝したり、果てはぶん殴ったりカメラを壊したりは完全に逆効果です。むしろ、死神の側はこういう対応こそ望むもの。理由は「書ける」「映像になる」(=仕事になる)からです。

最悪の場合、本来は前回記事の①(=自分じゃなくても成立する企画)だったものが、完全に自分1人に報道のターゲットが向く②の企画に昇格してしまう可能性すら出てきます。

とりあえず週刊誌の記者には丁寧な対応をしておきましょう。

あの人ら、自分に辛辣な態度取った人の記事はこっぴどく書く傾向にあるから。

『推しの子』

こちらは、『推しの子』11巻で、所属タレントのスキャンダルが持ち上がった際の、芸能プロ社長のミヤコのセリフです(句読点を補いました)。

現場感覚として、この傾向は確かにあると感じます。死神は本来、あなた個人に対してはなんら悪感情を持っていないにもかかわらずあなたを社会的に葬りにくる存在。そんな相手に、わざわざ自分を憎ませてしまうと、私怨が加わったよりひどい攻撃を招くことになります。

いかに腹が立っていたとしても、死神を怒らせる行動や、死神文脈で自分のキャラが立ってしまう行動は傷口を広げるもとになるので、得策とはいえません。

取材拒否も得策ではない

「取材拒否」も(前回記事②の一部のケースを除くと)あまりよくありません。相手が逃げると追いかける、口を閉ざすとこじ開けるのが死神の習性。また、取材依頼を当事者が黙殺する行動は、事情のいかんにかかわらず死神側の解釈だけで好き放題に報じられるリスクを生みます。……というか、現場感覚としてはほぼそうなると感じます。

また、取材拒否はそれだけで「死神に逆恨みされるリスク」を生みます。理由は死神も仕事でやっているから。当事者に喋ってもらわないと「仕事にならない」わけで、記事や映像を作る際に手間がかかります。そうすると、(理不尽な話ながら)取材対象者に悪感情を抱きがちになります。

ただ、逆にいうと、堂々たる態度で従容として取材を受ける相手には、死神も無茶はできません。死神も正体はただの人。相手が人間的に立派な態度の人だと、善なる魂を手にかけることに良心の呵責が生まれる。

また、死神業界には「ちゃんと取材に応じてくれた時点で、相手に一定の敬意は示すべき」という、仕事上の不文律も存在します。大手週刊誌などの場合、この死神なりの規律は意外と強固です(テレビの場合は知りません)。リスクコントロールの上では覚えておくとよいでしょう。

明らかに憎めない人だったり、しっかりした信念を語られたりすると死神は困る

明らかに憎めない人だったり、しっかりした信念を語られたりすると死神は困る

ベストの対応は、むしろ死神を積極的に自宅に上げ、茶や菓子でも出してやること。家に幼な子やかわいいおばあちゃんがいる場合は、あえて相手に見せつけ、いたいけな様子で茶菓を運ばせましょう。ぬるい死神だと良心が痛んで刃が鈍ります。

死神の数が多い場合は共同会見をやること。そして、やるときは彼らが満足するまで何時間でも付き合うことです(いっぽう、共同記者会見以外では何も喋らない)。

相当な体力と、絶対に失言をしないという自己コントロール能力が必要になりますが、上手にやれる場合は「共同会見」は有効な防御方法です。

死神に狙われた時点で、被弾ゼロで逃げ切ることは簡単ではありません。ならば、相手が「最低限仕事になる」状態を作ってやったほうが、逆に傷口を広げずに済みます。

喋りすぎない

取材を受ける場合、一言だけ相手がほしいことを言ってあげる、という方法は悪くありません。死神が最低限「仕事になる」材料を与えてあげる、ただしそれ以上はなにも与えない。これをやると、意外とあっさり引き下がってくれる場合があります。

逆に注意すべきは「喋りすぎる」ことです。人間は本来、自分の話を誰かが真剣に聞いてくれることに快感を覚えてしまう生き物。相手が感じのいい人だった場合や、正体が死神であることを忘れさせるほどの聞き上手だった場合、ついつい話しすぎてしまいます。これは非常に危険です。

また、相手が雑誌記者であれば、先方が取材用の録音を止めてからが防衛の本番です。つい気が緩んでしまい、相手の去り際なんかに「実は本音としてはさー、俺も〇〇に問題あると思うんだよなー」とかサービス精神から言ってしまったりするのはもってのほか。死神はこの一言を待っています。

いっぽうで、取材中の生返事もよくありません。相手がたちの悪い記者だった場合、「〇〇についてそういうことですか?」「おーん」みたいなやりとりで、「〇〇と言った」と書かれてしまうことがあります。

さすがに私はこれはやらないのですが、死神業界にもクズはいます。また、死神本人の権限や能力が低く、デスクや編集長の意向に流されて仕事をする無能なロボットタイプだった場合も、この手の行為に手を染めやすくなります。

言質を取らせないで防衛する方法

いっぽう、人によっては有効な防衛法のひとつが「まったく要領を得ない話をする」です。それも計算高く煙に巻く感じではなく、純朴かつ天然気味に。

一族の先祖から語るようなやたら回りくどい話やら、マニアックすぎて意味不明な話やら、地元の人間にしか絶対わからない話やらを、取材の本題と関係なく延々と話す。相手が本題に引き戻そうとしても、二言目くらいから謎の話に戻る。

あーん、わしが中国のスパイに協力した件か。まずだな、うちの町内は山田野という、これは室町時代に山田という百姓が野原で焚き火を……。だから夏になると山田祭り。えっ、あんた知らないの? そりゃいかんな、見に来てください。あーん。全国の山田が集まる山田祭り。そんで、隣の家のサチコさんは田中だから、山田は気に食わんと昔から言っておってな。そう、あそこの家の4代前の息子は特攻隊で戦死した。うちのじいさんが見送ってなあ。

実際にこういう人はいます。そして山田と田中の話だけをされて2時間が経過。「あーん、そろそろ暗くなってきたから帰りなさい」と言われ、具体的な情報はなにも得ないまま死神は退散せざるを得ない。

山田祭りに敗北する死神

山田祭りに敗北する死神

しかし、死神側から見ると取材自体には応じてもらっている。家に上げられて漬物をごちそうになり、土産にミカンまで貰っている。相手をボロカスにやっつけるわけにもいかない。困る。

もっとも、これは自分が「不祥事を起こした団体の代表者」だった場合はやってはいけません。要領を得ない話をしている時点で、団体としての責任能力を問われてしまうからです(その好例が、辺野古沖でボート事故を起こした反対協でしょう)。

また、要領を得ない話が有効なのは、主に文字で記事を書く雑誌記者に対してです。相手がテレビだった場合、めちゃくちゃなことを喋る姿がそのまま電波に乗ります。スキャンダルの渦中の人がエキセントリックすぎると、ネットでミーム化されてしまい、逆にもっと追いかけ回されることになります。自分が踊るINMU KING動画を作られるとか目も当てられない。

さて、ここまでは基本的な実践防衛法です。もっと効果的な手法については次回の記事で説明します。

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